知る・学ぶ/コラム車内媒体でベネフィットを伝える
電車広告
2024.11.28
本記事をご覧になっている方の中にも睡眠に関してお悩みを持っている方は多いのではないでしょうか?かくいう筆者も加齢とともに睡眠時間の短さが辛くなっており、いかに限られた時間の中で良質な睡眠を取れるかに腐心してきました。今回は、様々なサプリやグッズなど試している中で、出会った「ブレインスリープ」の、マーケティングの考え方やOOHの活用法について、株式会社ブレインスリープに話を伺いました。
「睡眠の質」に着目した新市場を作り出す
世界でも日本の睡眠時間は特に短く、ビジネスパーソンにとって、慢性的な睡眠不足は深刻な問題です。そんな現代社会において、「睡眠の質」という新しい価値提案で注目を集めているのが、ブレインスリープです。
私自身、妻の勧めでブレインスリープの枕を購入して以来のユーザーですが、実店舗での体験時に「すぐ寝落ちしそうになった」という印象的な体験が決め手となりました。この体験は、同社が提唱する「脳が眠る睡眠」という概念を端的に表すものでした。
ブレインスリープのマーケティング戦略の根幹にあるのは、「睡眠時間の確保」から「睡眠の質の向上」へという価値観のシフトです。同社によると、睡眠時間の理想が7-8時間と言われていても、現実的には確保が難しい。そんな限られた睡眠時間でも睡眠の質を高めることで、より充実した生活を実現できないかと考えたそうです。
複数接触でビジネス層に訴求
同社は20~50代のビジネス層をメインターゲットに据え、特徴的なメディア戦略を展開しています。その核となるのが、複数のメディアを組み合わせることで接触頻度(フリークエンシー)を高めるアプローチです。
一度の接触で購入まで至ることは稀ですが、電車内広告を軸に、タクシー広告やエレベーターのデジタルサイネージなど、ビジネスパーソンが日常で触れる場面で継続的に訴求を行うことで、徐々に関心を高める戦略を採っています。
「エビデンス」と「信頼性」を訴求しやすい車内環境
同社が電車内広告に注力する理由は大きく2つあります。
1つ目は、移動中の「静止した時間」を活用できる点です。電車内では人が動きを止めている状態であるため、エビデンスを含む詳細な情報もしっかりと目を通してもらいやすい環境に同社は注目しています。例えば、「ブレインスリープ ピロー」を使用した6時間睡眠が、一般的な機能性枕での7時間睡眠よりも高い疲労回復効果を示すというデータなども、理解していただきやすい環境だといいます。
2つ目は、公共空間ならではの信頼性です。デジタル広告では、真偽の判断が難しい情報も増えている中、公共の場で審査を通過した広告を出稿できることは、企業としての信頼性向上にも寄与していると感じているそうです。
比較的長時間人が立ち止まりやすい公共空間のひとつである電車内では、信頼性とともに詳細の情報が伝えやすい。
上から下への導線でストーリーを伝える
同社の電車内広告は、黒と赤を基調とした視認性の高いデザインが特徴です。さらに、以下のような一連の流れを、1枚のポスターで実現することを目指したそうです。
1. まずは瞬間的にアイキャッチして、『脳が眠る枕』という本質的な価値を理解してもらう。
2. エビデンスによって納得感を醸成する。
3. 最後に検索行動を促す。
実際、この取り組みは大きな成果を上げており、広告実施後の自然検索数は目標の2倍以上を記録したといいます。
ブレインスリープのポスターデザイン。上部のコピーでアイキャッチ→中部でエビデンス→下部で検索の導線を意識したデザインとなっている。
同社の考えるOOHの可能性
デジタル化が進む現代だからこそ、リアルな接点の価値は高まっていると同社は考えています。スマートフォンでの小さな画面接触が増えている中、電車内の大きなビジュアルでの訴求は、むしろ新鮮に受け止められていると考えているそうです。特に、まだ起きたばかりで眠い朝や仕事で疲れて帰宅する夜など、睡眠について考えやすい通勤・帰宅時の接触は効果的といいます。
一方で課題も存在します。電車内メディアと比較して、駅構内のサイネージなど、歩行中の接触では即座の行動喚起が難しいと考えているそうです。
より大きなビジュアルを使用してインパクトのある訴求を行なう場合は、駅や屋外のメディアが適しているかもしれませんが、今回のブレインスリープのように詳細の説明から行動変容に誘導する場合は車内メディアが有効といえます。こうしたメディアの特性に応じた使い分けが重要です。
「限られた時間でも質の高い睡眠を」というブレインスリープのメッセージは、現代社会に新たな市場を創出しました。その価値を伝える手段として選ばれた電車内広告の事例は、OOHメディアのひとつの可能性を改めて示すものといえるでしょう。