知る・学ぶ/コラムデータドリブンなOOH運用を進化させる鍵「生活者行動の解像度をいかに高められるか」

電車広告駅広告

2024.02.26

データを活用した広告配信は、デジタル媒体だけではなく、アナログなメディアでも導入が加速している。それは、OOHも例外ではなく、ターゲットに合わせた広告のメッセージ配信、リアルタイムな行動データを駆使した戦略的な展開ができるようになってきた。昨今の広告戦略において不可欠なデータ活用を軸に、より効果的かつ効率的なOOHキャンペーンを展開するためにはどうすればよいのか。本記事では、OOH広告をデータドリブンに運用する方法に焦点を当て、効果的な戦略構築から最新テクノロジーの活用法をメトロアドエージェンシーの岡 博之氏が解説します。

仕事や買い物など、目的地へ向かう際に利用する街や駅には様々な広告物があります。果たして、広告の前を実際に通過した人数や、それぞれの趣味や趣向、広告を見た人の年齢層はどのくらいなのか、疑問を感じたこともあるのではないでしょうか。

また、出稿側は、駅前など交通量が多いからきっと誰かが見ている、長く同じ場所に出稿すればよい、などと考えていないでしょうか。他には、ひとつのクリエイティブを様々な媒体に使い回す、ワンソースマルチユースになっている可能性もあると思います。

駅のOOHに限定していうと、今まで多くのOOHは、年に1回の調査から、利用者数や性別、年代の構成割合を調査して属性傾向を導き出していました。

しかし、属性傾向とは実に曖昧で、漠然としたもの。だからこそ、マスマーケティング化とワンソースマルチユースなクリエイティブになってしまう懸念が生じるのです。さらに、生活者のライフスタイルが多様化してきていることから、マスマーケティングではなく生活者一人ひとりに合ったマーケティングが重視されている現状があります。つまり、最適な「ターゲット」に、最適な「タイミング」で、最適な「内容」の展開が、これからのOOHにとって重要になってくるのです。

例えばコンビニは、生活者の行動動線に基づいて店舗設計がなされ、最適な内容(品揃え)になっていますよね。店舗は、狭い空間だからこそ、人々の行動動線に基づいた品揃えや陳列の設計が可能となります。

では、OOHで考えてみましょう。OOHの対象空間は非常に広く、生活者の行動動線が多様化していることから、コミュニケーション設計が難しいことが課題です。

そこで、視聴空間にどれだけの人がいたのか、実際にどれだけの人に見られたか計測すべく、AIカメラや位置情報データとの連携が進んでいます。

進化する行動データの世界生活者に届くOOHを叶える

ある鉄道会社では、車両内ドア上のサイネージ内にカメラとIoT機器を搭載することで、AIが車内の映像を解析し、環境に応じた表示内容や広告を切り替える取り組みを実施しています。なお、広告以外にも、気象情報や運行情報など、生活者に有益な情報を出し分けができつつあるようです。

また別の鉄道会社では、駅に設置したサイネージにカメラを搭載し、周辺の通行者の通過日時や属性、視認の可否に関する推定データを解析していたりします。その他、カメラだけでなく、空間データや流動量調査などと掛けあわせることで、広告接触者を計測しているのです。

さらに、広告媒体を起点にしたデータだけではなく、生活者からの情報発信を確認できる代表的なX(旧Twitter)やInstagramといったSNSでの発信量からもOOHの話題性がどれぐらいあったのか、知ることができます。

例えば、関連キーワードや写真の投稿からは、話題の規模感や、話題の方向性がポジティブなのか、もしくはネガティブなのかを分析します。SNSは無意識のうちに、オフライン展開であるOOHに対する反応を、オンラインで探ることができるようにしたツールでもあるのです。

また、OOHの特長のひとつとして挙げられる、その場でしか見られない“限定感”は、生活者に発見や驚きを与えます。しかし、マス広告やデジタル広告には各メディア独自で統一された計測手法があるものの、OOHは独自の計測手法が統一されていません。これこそが、2つ目の課題です。

OOHは、そのダイナミックさや、特長的なインパクトを与えるがゆえに、プロモーションメディアとして効果的な位置づけになっています。

そのため、商材によっては、各広告メディアに役割を設けることで、出稿目的を明確に設定するところから改めて確認し、プランニングから練り直すことも課題解決に近づくひとつの手です。また、認知拡大を図るため、潜在的なターゲットが存在するエリアを各種データと連携することで事前分析も可能になります。分析結果をもとに、プランニングを行うことで、マルチソースなクリエイティブ表現ではなく、分析結果を考慮した表現が叶い、広告メッセージがより生活者に届くでしょう。

生活者行動の解像度を上げる「360度のコミュニケーション」

ここまでで、サイネージに設置したAIカメラによって行動データを取得することができるようになりつつあるとお話しました。

では、その取得できるようになった行動データを使って、今、OOHの運用はどのように変化しているのでしょうか。

この運用方法は一例ですが、当社では2021年にunerryとともに開発した「行動DNAアナライザー」というサービスを開始しました。これは指定駅の利用者の行動(行動DNA)や勤務地、居住地といったユーザー情報を特定の駅において任意の期間で抽出し、ターゲットとなる生活者の解像度を上げることが可能になるものです。オフラインのプランニングはもちろん、オンライン上の施策にも役立てることができます。

図1は、提携アプリから蓄積された位置情報*をAIが解析し、人々の移動情報から趣味嗜好を可視化しているものです。図で色がかかっている部分は、該当都市の人々の関心度が高いカテゴリを指します。例えば、神楽坂ではアジア料理店を利用する傾向があると分析できるのです。これらの情報によって、図2のように、生活者行動の“解像度””を上げ、出稿場所やクリエイティブの内容などをより最適化して活用できるようになりました。

*GPS、Bluetooth、ビーコンから取得。

取得・分析した生活者の基本属性、行動DNAをもとにデータに紐づいた解像度の高いペルソナ設計を実現

つまり、生活者の行動データを把握できることで、冒頭で触れた、最適な「ターゲット」に、最適な「タイミング」で、最適な「内容」の広告メッセージを届けることが実現できるようになるのです。

当社が行動データを把握できるソリューションを開発したように、今後のOOHは、生活者の行動動線を考察・分析することで、最適な内容を伝えることが市場全体で求められています。カメラなどのセンシングデータや、生活者の購買データとの連携など、独自の計測手法はますます必要となってくるでしょう。

これらのデータを駆使し、広告キャンペーンを行うのはOOHだけに完結してはいけません。生活者の行動動線を把握した上で、360度全方位から様々なメディアを使い、メッセージを提示するというアプローチを成立させていくことが、広告主が求めていることではないでしょうか。

そのためにはまず、OOHに接触している生活者のデータを取得し、それらを有効的に活用、効果を最大化する運用につなげていくかが、今後のOOH活用の鍵になってくると考えています。

※本記事は月刊『販促会議』2024年1月号に掲載されたものです。

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