知る・学ぶ/コラムWeb広告と同等の効果を狙う「mineo」のハイブリッド戦略にせまる

駅広告

2024.03.29

格安スマホおよび格安SIMのサービスを展開する「mineo(マイネオ)」。同サービスを展開するオプテージは2023年10月23日、広告通信量のカウントをフリーにする無料オプションサービス「広告フリー」のプロモーションにて、エスカレーターとボード広告の展開を実施。効果測定が難しいとされるOOHの弱点をSNSでの連動キャンペーンで補完し、効果を最大化する試みを行った。その取り組みの詳細について同社モバイル事業戦略部の林 俊伸氏と坂本紀子氏に話を聞いた。

オプテージが展開する格安SIMサービス「mineo」は、2022年より継続してOOH広告の運用を行っている。同社の坂本氏は、OOH広告への出稿を選び続ける理由について、次のように説明する。「今回プロモーションを行った『広告フリー』は、“デジタル広告によって消費しているデータ通信量のカウントをフリーにする”という無料のオプションサービスです。そうしたサービスの特性や広告メディアとの親和性も加味して、デジタル広告ではなく“パケット消費が発生しない”OOH広告を選び続けています」。

同社によれば、スマホ使用時のパケット通信量のうち、実に4割が動画広告を含めた広告表示に消費されているという。そのため、「広告フリー」のプロモーションにおいてはパケット消費が発生するデジタル広告ではない媒体を選んでいる。これまでも新聞広告やボード広告、トイレ内、電車の中吊りといった、デジタル上の展開ではないOOH広告をあえて積極的に活用してきた。

広告は、普段から何気なく触れてしまうエスカレーターの手すり部分に掲出した。

“つい”触れるエスカレーター SNS拡散が狙える理由

また、OOHを選択する理由はクリエイティブにもあるという。その内容について、同社の林氏は「今回は、Web広告の中でもPCやスマホのブラウザに覆いかぶさるように表示される『ポップアップ広告』をOOHにすることにしました。日常的にWebで目にする広告を、現実世界に登場させるというコンセプトです。普段はスマホの画面で触りたくない広告を、つい触ってしまう“エスカレーターの手すり”部分に出現させることに面白さを感じました。これは、実際に広告に触れることができる物理的な体験が促せるOOHならではのユニークさだと思っています」と話す。

また林氏は、一般的に出稿のハードルが低いWeb広告と比較して内容の信頼性が高まる点も、OOHのメリットのひとつだと語る。OOHが通行者にもたらす安心感こそが、サービス自体のブランディングにもつながっていくと考えている。

そして、何よりもスマホを取り出して、気になった広告を撮影し、SNSに投稿・拡散してもらえることに大きな優位性を感じていると坂本氏は語る。「以前は、電車内やトイレ内に出稿しましたが、そういった環境では気軽にスマホを取り出して撮影することが難しいです。今回は過去の反省点も含め“スマホで撮影しやすい”ボード広告をエスカレーター広告とセットにして選びました」(坂本氏)。

OOHとSNSのIMP単価をWeb広告と同程度に設定

しかし、広告視聴のデータ取得が難しいことから、OOH広告の活用においてはKPI設定が難しいとされる。これまでも度々OOHに出稿してきた経験がある同社では、どのようにその効果を測定しているのか、坂本氏はSNS上のインプレッションを活用していると話す。「駅構内に出稿する場合、乗降客数から『どのぐらいの人目に触れるか』という大体のインプレッション数を導き出せます。さらには、X(旧Twitter)上でもOOH広告出稿の告知投稿を行っているため、SNS上のインプレッション数でも『視認された』ことをカウントしていますね。それらの合計インプレッション単価が、Web広告のインプレッション単価と同程度になるようKPI設定をしています。OOH広告は実際に現地で見てもらえる人数は限られるため、SNS上のインプレッションやエンゲージメントを重視しているのです」(坂本氏)。

また、Xと連動したキャンペーンでは、自由にスマホ広告を制作できる画像ジェネレーターを使い、「#絶対にタップしたくないスマホ広告」を投稿する大喜利企画を実施。ユーザーの積極的な参加など、OOHだけでは図れない効果につながったという。

ただし、OOH広告の出稿は、巨大なボード広告や中吊り広告など、費用の面である程度の出費が必要となるイメージがあるが、その点をカバーする方法について林氏は、SNSとの連動効果を強調する。「確かに、OOHは一見費用がかさむように見えますが、本プロモーションのように人通りの多い場所を選ぶことで、最終的にはWeb広告のみを運用したときと同程度の費用にまとまると考えています。もちろん、OOH単体の効果だけに期待すると厳しいですが、SNSのインプレッション数も含めて考えるとWeb広告と同等の費用対効果が見込めています」

林氏によれば、今回のOOHを京王線新宿駅で展開した理由は、「場所や時間的な相性が良かった」からだという。普段、シニア層がポップアップ広告に触れる機会は少ないと想定。そのため、デジタルネイティブ世代がよく利用する同駅を選定することで、効果的な接触を狙った。

また、エスカレーター広告とボードの位置関係については、SNSへの投稿や拡散のハードルが高くならないよう、できる限り近い場所に設定するなどの工夫も施したという。

PCやスマホのブラウザに覆いかぶさるように表示される「ポップアップ広告」をOOH広告で表現することで、通行者に違和感を抱かせる仕掛けに。

OOHの広告効果を最大化 デジタルサイネージに注目

いわばOOH広告出稿のヘビーユーザーであるオプテージは、今後、どのように屋外を活用したプロモーションを展開していこうと考えているのか。坂本氏は前述のSNS活用のように、「連動性」を意識していきたいと話す。

「あくまで出稿先は屋外ですが、OOHを軸にしながらさらにSNSのオーガニック投稿でバズを生みたい、という思いが強くありますね。他社のバズを生んだクリエイティブを見ていると『気づいた人がつい言いたくなる』という共通点を感じます。その点、OOHならではの連動性や共感性を取り入れながら、形にしていきたいと思います」。

林氏も、今後取り組んでみたいOOHについて、今まさに進化しているデジタルサイネージに注目していると話す。「多くの人に直接リーチできるOOHのメリットはそのままに、時間帯に応じて表示するコンテンツ内容を変化させることができるなど、より最適化された運用が可能になるからです。デジタルネイティブ世代にはSNSでバズを狙いつつ、SNSをあまり使わない世代には原点回帰のような形でOOH単体でも訴求メッセージが伝わるよう工夫してリーチするなど、同じインプレッションでも効果を最大化できるようにしたいですね」。

今後は、コロナ明けがより一層加速化することが予想される。街に人流が戻り、OOH広告に触れる機会もさらに増えるはずだ。そうした流れも踏まえた上で、Web広告の隆盛が待ったなしとされる今後も、OOHを活用したいと林氏は締めくくった。

 

※本記事は月刊『販促会議』2024年1月号に掲載されたものです。

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