知る・学ぶ/コラムゴールドジムが駅看板を重視する理由

駅広告

2024.09.02

日々の通勤・通学で駅を利用する際、様々な看板広告を目にする機会が多いのではないでしょうか。その中でも、フィットネスジム「ゴールドジム」の看板を見かけた方も多いはずです。なぜ、ゴールドジムは駅看板広告を重視しているのでしょうか。今回は、日本国内でゴールドジムの運営を行なう株式会社THINKフィットネスへの取材を通じて、その理由を深掘りしました。

東京メトロ駅構内に掲出されているゴールドジムの駅看板広告

エリアマーケティングの要としての駅看板広告

 ゴールドジムは人口密度の高い首都圏エリアを中心に店舗展開をしており、利用者は主に店舗のある地域に住んでいるか、その場所で働いている人々です。そのため、日常的に使う街にゴールドジムがあることをいかに知ってもらうかが、各店舗のマーケティング活動の戦略となっています。
 同社では、特に継続的な認知獲得を重視しており、潜在顧客がフィットネスジムの利用を検討した際に、真っ先にゴールドジムを想起してもらうことを目指しています。この戦略のもと、駅看板広告を中心に、チラシやMEO(マップ検索エンジン最適化)などを実施しています。

ゴールドジムは人口密度の高い首都圏エリアを中心に展開している

メディア選定における3つのポイント

 ゴールドジムでは、広告メディアを選定する際に以下の3つのポイントを重視しています。

1.ターゲット層への高い到達率 
 店舗のある地域に住んでいる人や働いている人に確実に情報を届けられるメディアであること。

2.長期的な認知獲得
 フィットネスクラブの利用は個人の生活状況に左右されるため、長期的に情報を提供し続けられるメディアであること。

3.コストパフォーマンスの高さ
 継続的な広告出稿を行うため、費用対効果の高いメディアであること。

これらの条件を踏まえ、同社では駅看板広告に注力しています。駅看板広告は、以下の理由から前述のポイントを満たすメディアとして評価されています。

店舗出店地域を利用する人に対し、継続的なアプローチができる。

 まず、駅は地域の「住んでいる人」や「働いている人」のどちらにも多く訴求できるため、各店舗のターゲットに最も到達しやすい場所です。また、駅看板広告は長期掲出が基本となるため、「ここにゴールドジムがある」という情報を常に潜在顧客の記憶に刻むことができます。さらに、ロードサイド看板など他のOOH媒体と比較して、駅看板広告は広告料金が安価であることが多いです。同社の調査によると、駅看板広告は入会の費用対効果としても非常に効率の良いメディアだと判断しています。
 このように、駅看板広告はゴールドジムのメディア選定における3つのポイントを高いレベルで満たしているため、同社の広告戦略において重要な役割を担っています。

同社では、店舗がオープンすれば基本的に最寄り駅の看板を実施しています。その際、以下のような点を考慮して媒体を選定し、クリエイティブを工夫しています。

◆場所の選定
・通行者が多い場所か?
・立ち止まって見られやすい場所か?
・広告視認者との距離が近いか、遠いか?

◆クリエイティブの工夫
・通過時間の短い場所ではシンプルなキービジュアルとメッセージを重視する。
・立ち止まりやすい場所では店内の詳細な写真や情報を掲載する。
・店舗の特徴が強い場合、その特徴を説明する言葉を追加する。

◆本国との連携
ゴールドジムがアメリカ発祥のブランドであるため、基本的な素材やコーポレートカラーは本国から提供されるものを使用しています。ただし、日本の状況に合わせて、キャッチコピーの日本語訳や独自のメッセージを加えるなどの工夫もしています。

比較的接触時間の短い通路上に掲出された広告の例。ブランド名を大きく表示したシンプルなビジュアルでアイキャッチのしやすさが意識されている。

比較的接触時間の長い駅ホーム前の看板では、店舗の特徴や詳細を伝える広告内容となっている。

渋谷店の広告例。店舗の特徴を強調し、「都心を一望!!天空にあるジム!!」というコピーが添えられている。

OOHの課題

 現在、効果測定については、見学や入会に来た方にアンケートを取り、ゴールドジムを知ったキッカケや入会の理由を聞いています。しかし、同社ではきっかけはチラシであっても、多くの人が日常的に通るルートに看板があることで、「そこにゴールドジムがある」と無意識に覚えているケースが多いと考えています。そのため、直接的な効果測定が難しいことを指摘しています。
 さらにOOHメディアに対する課題としては、以下の点を指摘しています。

看板の差し替えコストの高さ
物理的に広告面の貼り替えが必要な駅看板広告は、柔軟にクリエイティブを切り替えやすいとは言えません。こうしたコストが抑えられれば、時流に合わせたコピーの変更や、新しい情報の追加がしやすくなり、より効果的な広告展開ができるのではないかと考えています。

デジタルサイネージの課題
一方で1つの媒体で複数の広告が入れ替わるデジタルサイネージの場合、現状「全ての人の目に届かない」という点で活用していません。将来的には、技術の進化により、1社で独占して広告を出しながらも、広告切り替えにコストがかからない新しい形態の媒体に期待を寄せています。

まとめ

 以上から、ゴールドジムが駅看板広告を重視する理由は、以下の3点となります。

1.エリアマーケティングの効果的なツールとして機能する
2.長期的な認知獲得と刷り込みが可能
3.メディアとしてのコスパが高い

ゴールドジムの事例から、駅看板広告の長期的な刷り込み効果と、エリアマーケティングにおける重要性が明らかになりました。特に都心部での店舗展開において、駅看板広告は効果的なメディアとして高く評価されています。

比較的安価な予算で同じ場所に出し続けられる駅看板広告は、地域利用者への訴求手段としてコスパの高いメディアであると言える。

 今後、テクノロジーの進化とともに、従来の駅看板広告の利点を活かしつつ、より柔軟で効果的な広告手法が登場することが期待されます。しかし、エリアマーケティングにおいて、「その場所に継続して出稿すること」の重要性は、今後も変わらないでしょう。ゴールドジムの事例は、従来型のメディアである駅看板広告が、現代のマーケティング戦略においても依然として重要な役割を果たしていることを示しています。

このコラムの著者

リテール&メディア事業開発 メディアプロデューサー unerry 平井健一郎

ひらい・けんいちろう/2023年6月unerry入社。広告代理店でOOH(交通広告・屋外広告)の企画営業や新規事業開発などを経験後、JR東日本グループにて鉄道関連事業やOOHビジネスのDX推進に従事。unerryではメディア領域の事業開発を担当。自身の運営する「Oh!OOH!!」やマーケティング専門誌「販促会議」にて街ナカメディアの活用事例を発信中。

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