知る・学ぶ/コラム人流データ×消費者意識データで進化するOOH広告の効果測定

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2024.06.19

交通広告・OOHに強みを持つメトロアドエージェンシーと、マーケティング・広告の専門メディア「AdverTimes.(アドタイ)」とのコラボレーションで、OOH領域の知見をより広く、深くお伝えしていく短期連載。 第2回は、ジオテクノロジーズの岡枝幹也氏が人流データを活用したOOH広告の効果測定について解説します。

ROI計測が難しかったOOH広告

都市の景観に溶け込み、多くの人が日常的に目にしているOOH広告。その存在感や普及度合いとは裏腹に、広告がもたらす影響を科学的に解析・効果を最大限活用することが難しいという構造的な問題を抱えています。しかしながら昨今、OOH広告の定量的評価という難問に「人流データ」という切り口のアプローチが見いだされ、業界に新しい風が吹こうとしています。本稿では業界が直面する課題と取り組みについて、データに基づく解決策を具体例とともにご紹介します。

そもそもOOH広告とは、ビルボードや交通広告といった公共空間に掲出されるもの。視認性の高さを武器に、長年にわたって効果的なマーケティング手段でした。デジタル広告全盛の今もなおその有用性・影響力は衰えていないものの、デジタル化やそれに伴う消費者行動の変化により、ある種の融通の利かなさが表面化してきました。
その最たるものは、広告効果を定量的に測定することが困難である点でしょう。アナログ媒体であるがゆえに、「いつ」「誰が」その広告に接触し 「どのように」行動変容を起こしたかを測ることが難しい、ということです。こうしたトラッキングの難しさゆえにOOH広告はROI(投資対効果)の評価がしづらく、広告主が適切な投資判断を下しにくい、というある種の扱いにくさをはらんできました。

また、OOH広告はその性質上、一度出稿してしまうとターゲティングや広告素材を迅速に変更する・差し替えることが難しく、広告のパーソナライゼーションが制限されてしまう点もウィークポイントといえるでしょう。いずれにしても「アナログメディアである」ということに起因する問題といえます。

OOH業界で行われているアプローチ

これらOOH広告特有の効果の曖昧さ・運用の難しさといった難点を克服するため、近年業界内では「人流データ」・「アンケート調査」・「モバイル端末固有のIDRDID)」を併用し、それらを掛け合わせることで広告効果の定量化を図るというアプローチが行われています。効果測定の主な流れとしては以下のようになります。

(1)広告接触者判定・推定リーチの計測
事実情報である人流データを用いて、特定ビジョン前の通行や特定路線の乗車を判定。ユーザーの「行った・見たかもしれない」という主観に拠らず、推定リーチ数を算出。実際にどれだけの人々に広告が届いたのかを計測します。

(2)アンケート調査の実施・広告認知率などの計測
スマートフォンアプリなどを利用したアンケート調査にて、特定期間・エリアにおける広告認知率などを聴取。近年では、当社をはじめ(1)でOOH広告に接触した可能性があるユーザーを人流データで捉えた上で、そのユーザーに対して調査を実施する手法も広がっています。

(3)モバイル端末固有のIDを利用したオンラインCVの計測
上記の人流データに紐づく端末固有のIDRDID)を利用し、ECサイトなどオンラインCVに対する影響を計測する取組みも増加しています。OOH広告では、オンライン上にCVポイントがある事業を運営する広告主も多く、広告効果を定量的に計測するためには、オフラインとオンラインを繋げる必要があります。そこで、オプトインされた端末固有のIDがその役割を担います。(1)の人流データを提供しているユーザーのIDを活用することで、OOH広告の接触からCVまでを計測することが可能となっています。

(※当社Geo-Researchを活用したOOH広告効果測定レポートイメージ)

効果測定手法の進化で市場成長に期待

新型コロナウイルスの流行が落ち着いたことで各地を行交う人波は活気を取り戻しつつあり、人流や広告関連業界は緩やかな追い風を受けているといえます。

さらにデジタルサイネージ市場の伸長にも目覚ましいものがあり、その市場規模は801億円(2023年)から1,396億円(2027年)へと達する見込みです(1)。この流れは今後も加速していくと考えられ、今後日本のOOH広告はデジタルサイネージ市場と共に成長していくことになるでしょう。

デジタル系媒体が伸長していけば、それだけ広告主からの計測の要望は増していくと考えられ、業界としてより一層効果測定に取り組むことが必要と感じています。上記(1)~(3)に挙げたような人流データを軸とした活用事例を積み重ねることが、OOH広告の効果をしっかりと世に示すことに繋がり、ひいては業界の拡大に寄与するのではないでしょうか。

 

※1)CARTA HOLDINGSのプレスリリース「CARTA HOLDINGS、デジタルサイネージ広告市場調査を実施~2023年のデジタルサイネージ広告市場規模は801億円の見通し、2027年には1,396億円と予測~」(20231221日)より

このコラムの著者

GPマーケティング営業本部 ジオテクノロジーズ 岡枝幹也

おかえだ・みきや/2022年10月にジオテクノロジーズ入社。前職は電通東日本。一貫してデータマーケティングに従事しており、同社の持つ豊富な人流データがOOH業界に進化をもたらすと確信して転職。現在はマーケティングコンサルタントのマネージャーとして従事し、プランニングや効果測定の分野でOOHメディアとの関連性を深めています。

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