知る・学ぶ/コラム全国に広がる「肉眼3Dビジョン」媒体主に聞く広告戦略&マスコット(後編)

2024.09.17

湾曲したディスプレイなどで専用の3D映像を放映することにより、視聴者に眼鏡などの補助道具を介さず立体映像を見せる「肉眼3Dビジョン」。デジタルサイネージの屋外設置が普及して久しいが、大型化・高解像度化・設置数増加のみならず、”表現”の追求により生まれた付加価値といえる。今回の特集では、各地の肉眼3Dビジョン媒体主に、設置経緯やこれまでの実績、そして今後の展望についてインタビューした内容を、全3回にわたって紹介する。

ブレイブビジョンなんば│宇宙船や恐竜など放映

 2020年4月に竣工したBRAVE難波ビル壁面に設置された「BRAVE VISION NUMBA(ブレイブビジョンなんば)」。
 
 同ビジョンは、24年度中に完成予定の「なんば広場」の南端一角に位置する。また、南海なんば駅南口を出た正面に加え、髙島屋やなんばCITY、道具屋筋、吉本NGK、オタロードなどに隣接するほか、25年には電柱地中化事業により、これまで画面を遮っていた電線が無くなるといった好立地条件を加味して設置されたもの。

「宇宙船」のコンテンツ。ビジョンの前の電線がなくなるとより見やすくなる

 「当初は左側の16対9という通常画面のみの放映だったが、右側テナント表示用の横幅半分程度の画面も有効利用しようと、毎時ジャストタイムの1分間のみ、両画面を使用した3Dコンテンツを放映している。ビジョンは、左右の画面が約150度程度の角度が付いているため、3Dコンテンツを表現しやすいのが特長だ」(㈱南海廣告社 常務取締役/COOの岡田実氏)。
 現在、メインとなるキービジュアルのキャラクターは特に設定していないが、毎時1分間の3D映像タイムではロボットや宇宙船のコンテンツを放映している(通常の2D画面では、4階に入居している「くら寿司」や銀行、フィットネスタイムなど)。
 今後の展望について、同社の担当者は「来年は、大阪・関西万博が開催される。関西空港線からの南海なんば駅の活性化はもちろん、電柱地中化の整備などでノイズになっていた電線が無くなり、視認性は格段に良くなるなど媒体価値が向上するのは間違いない。このため、毎時1分間の3D映像枠を広告主に積極的にアピールしていきたい」と話す。

六ツ門3Dビジョン│市のキャラのカッパ登場

 ㈱ビジネスプロモートは、久留米市の中心市街地ビル街に「六ツ門3Dビジョン」を新設、2024年2月15日から放映している。
 
 現在、久留米市内では郊外に大型ショッピングモールがあり、多くの市民が日常的な買い物からレジャーまで利用している。加えて市内中心部の商店に市民の流入が減少、またコロナの影響で休業や廃業に追い込まれる店舗が多数出ているという。
 同社は市民の流入を増やすため、グループ企業である㈱久留米ビルが所有し、市の中心市街地ビル街に位置し、六ツ門交差点に面する六ツ門ビル壁面に大型ビジョンを新設。市内の企業や店舗の広告、市内の情報を中心に放映している。

 メインとなるキービジュアルキャラクターの選定については「市のイメージキャラクターである〝くるっぱ(モチーフはカッパ)〟を活用してPRすることで、地域の発展・地域外からの誘客につなげ、ひいては観光・商工業が回復する起爆剤になるのではと考えた」(同社担当:本木裕子氏)。
 現在、肉眼3D媒体は〝くるっぱ〟以外でホテル関連が利用。「コンテンツはインパクトがあるので、久留米の新たなランドマークとすることにより、広告物としての利用価値を高め、広告掲載ニーズが増えることに期待したい」(同)。
 今後の展望について、同社の担当者はさらにインパクトのある3Dコンテンツを制作中とし、「3Dコンテンツと一般市民がコラボする企画や、SNSで拡散してもらえる企画を検討している。六ツ門ビルのビジョン前に多くの人たちが集まる仕組みづくりを考えていきたい」と話す。

ナムラビジョン│夜の街にジンベエザメが出現

  ㈱ナムラは2022年12月から、「ナムラビジョン」で肉眼3D映像を放映している。

 同社は那覇市松山に事業基盤を有し、その中で街のランドマークとなるべく、最も人流の多いメインストリートの入口を設置場所として選定した。また放映時間帯は、繁華街として活気づく夕方〜深夜にスポットを当てている。
 「ナムラビジョンを企画した当時、21年12月ごろはコロナ禍の真っ只中で、繁華街は完全に活気を失っていた。そこで街のために何かできることはないかと考え、文字通り街を明るくするLEDビジョンの構想に至った」。(同社担当・服部元氏)

ジンベエザメは沖縄美ら海水族館で30年弱飼育され地元にはなじみ深い生き物

 ビジョンのキービジュアルには「ジンベエザメ」を起用。沖縄らしさを条件に検討し、飛び出す3Dビジョンの迫力を表現できる巨大な生き物である点が決定打となり、また建物の中に存在するはずがない海を表現することで驚きを与えられることも評価ポイントにつながったという。
 ナムラビジョンは県内最大の広告用LEDビジョンでありながら、年間契約で月3万円から放映可能と、リーズナブルな価格を実現している。映像制作も同社で可能な限り無料で行っており、これは「街を盛り上げたい」という想いから、予算の少ない中小企業でも出稿可能にすることで、多様な映像を放映し街に彩りを与えることを目的としているという。

 

※本記事は『総合報道』2024年8月5日号に掲載されたものです

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