事例コラム 【SNSで6万いいね!】地元を味方につける交通広告│エスエストラストの看板ブランディング戦略
2025.07.02
ブルーの地にホワイトの文字で 「わたしより、信号を見て。」などユニークなキャッチコピーが目をひく。八王子エリアを中心に展開する不動産会社㈱エスエストラスト(本社東京)の看板が面白いと評判だ。仕掛けているのは、1999年に入社した、2代目となる杉本浩司社長。かつてはプロの選手を目指し、留学をするほどサッカーに力を入れていたという経歴も持つ。今回は杉本社長にユニークな看板を創ることになったきっかけ、こだわっているポイント、もたらす価値を聞いた。

6年前から看板に注力するようになった。そのきっかけは
杉本「若いころは全てを捧げ、今でも大好きなサッカー関連の人脈が現在も活きている。東京ヴェルディに行った先輩からスポンサーになってほしいと依頼が来た。2003年にアパマンショップに加盟していたため、スタジアムの電光掲示板には『アパマンショップ』の名前を表示した。しかしその時、『なぜ自社のアピールをしなかったのだろう』と疑問に思ったのが看板について考えるようになったきっかけだった。皆に『八王子のアパマンショップは当社が運営している』というイメージを持ってほしいと思った」。
どのように自社看板を創っていったのか
杉本「ユニークなキャッチコピーと豆のイラスト入りの看板を金沢市中に貼っている『のうか不動産』に感銘を受け、連絡をして視察、『参考にさせてほしい』と製作を開始。ただ看板を創るだけではなく、会社をブランディングしていきたいと考えるようになった。そこでブランディング会社に依頼をして、コーポレートカラーの青地に白い文字、サッカーチームをイメージしたロゴ、地域で『一番』を象徴するライオンのマスコットを決定した。これまで大型の野立て看板を中心に36カ所に展開していたが、今年から『私たちも携わりたい』と社員たちも自らアサイン。400から500ある当社の管理物件のフェンスなどに入居者募集用の看板を、8月下旬から順次掲出している。この中型看板37種類を八王子、高幡不動、聖蹟桜ヶ丘など8店舗でシェアしている。これからも看板に限らず『おもしろいことはエスエストラストに』というイメージを持ってもらいたい」。
以前は、看板は何気ない風景の一部だと考えていたとのこと。それから見解は変化したか
杉本「看板に連絡先を載せても、それを見て問い合わせをする人はほとんどいないのでは、と思っていた。しかし現在はボディブローのようにじわじわ効果を発揮する面白いブランディングツールだと考えている。看板は資産であり、積み重ねが大切。6年も継続していれば、認知も拡大してきていると手ごたえを感じてくる。当社の利用客は、地元の人が半数を占める。地域の人たちが毎日目にすることにより話題となって、全員を見込み顧客化させるような看板にしていきたい」。
10月は台風が上陸したが、落下防止の安全対策を実施したか
杉本「八王子市明神町五差路のきぬた歯科とのコラボ看板については、3連ボードのうち、一番弱い真ん中の板を看板企業の助言により外した。その『真ん中がない』様子をSNSにアップする投稿者もいたので、当看板自体の認知が拡大していることを再認識できた」。

【八王子市明神町五差路のきぬた歯科とのコラボ看板】地元のライターと考えた、地域の人がクスリと笑えるキャッチコピーなどを、企業名よりも大きく掲載している。一昨年は、院長の顔が印象的な『きぬた歯科』とコラボした看板も制作した。同歯科の看板の上に『きぬた歯科より目立ちたいけど、歯が立ちません。』というコピーの入った看板を掲出。それを見た人がSNSで発信し、その投稿はリツイート3万件、いいね6万件以上の反響を呼んだ。
今後の展望
杉本「すぐ行動を起こす顕在顧客にではなく、不動産を探す時に『エスエストラストに依頼しよう』と思い出してもらえる存在になれるようにアプローチしていく。また、子どもたちはどの看板にも描いてあるライオンのマスコットを探してくれると聞く。大人になった時もその時の〝ワクワク〟を覚えてくれていて、願わくは将来の顧客になってほしい」。
杉本「また自身の思い入れもありサッカーを通じて、社会貢献と企業側の利益を両立するCSV(Creating Shared Value)に取組んでいる。人事に関しては、サッカー部から新入社員を積極的に採用、有望な人材を一本釣りできるパイプを作っている。入社後も社員たちは共通の趣味があるため、終業後有志でフットサルをするなど交流を深めている。そのほか、プロサッカー選手のセカンドキャリアも考えている。狭き門を抜けてプロになった選手が引退後、『何の仕事をすればいいか分からない』と言うのは非常に惜しい。選手や指導者以外にもサッカーに関われる仕事はある。当社もそういった企業のひとつとして認知されていきたい」。
※本記事は『総合報道』2019年12月5日号に掲載されたものです