知る・学ぶ/コラムリアルとメタバース、2つのOOHで「ギャツビー」新シリーズが提供した体験
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2024.03.15
マンダムは2月に誕生した「ギャツビー」ブランドのスタイリング新シリーズ「メタラバー」の販売開始にあわせて、全国主要5都市にてOOHメディアを活用。さらに、メタバース空間「バーチャル渋谷」でも“屋外広告”を掲出した。新シリーズの発売にあたり、OOHを活用した狙いについて、マンダム ブランドマーケティング一部の関田航平氏に聞いた。
ロングセラーブランドが新シリーズを立ち上げた理由
マンダムはメンズコスメブランド「ギャツビー」から、2月20日にスタイリング新シリーズ「メタラバー」を発売。発売と同時にプロモーションとして、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の全国5都市で大型ビジョンを活用した屋外広告を展開。大型ビジョンでは、アーティストであるEveさんが書き下ろしたタイアップ楽曲「虎狼来(コロロン)」を使用したプロモーションムービー「誕生」篇を放映した。
また、同じく20日から「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」が立ち上げた都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」内の計35カ所に広告を出稿し、大型ビジョンにはプロモーションムービーやキービジュアルが掲出された。
「メタラバー」は、「超ラクに、超自在に、超キマる」をキャッチコピーに、“現代をスマートに生きる若者”をメインターゲットに据えて開発されたスタイリングシリーズ。「ギャツビー」ブランドでは、ヘアワックスシリーズ「ムービングラバー」が2006年の発売以降、男性を中心に多くの人に愛用され続けてきた。
そんな「ギャツビー」ブランドにスタイリング新シリーズを加えた理由について、「ギャツビー」のコミュニケーション戦略を担当する関田航平氏は、「若年層が“かっこいい”と思う対象が多様化している点が理由のひとつです。以前は“圧倒的なカリスマ的存在”を皆がかっこいいと思う傾向があったのに対し、現在はアイドルや俳優だけでなく、YouTuber、さらにはもっと身近な存在へと対象が広がっている。多種多様な現在の若年層の“かっこいい”に応えられるよう、よりZ世代を筆頭とした若者に向けた新シリーズを立ち上げました」と話す。
「メタラバー」では、Z世代に対して影響力を持つ新進気鋭のメンズサロン『fifth』や、アパレルブランド『Younger Song』を手掛けるクルーたちと共に、ヘアスタイルや商品の提案に加え、メンズヘアシーンを盛り上げることを目的に様々な取組みを行うプロジェクト「メタラバープロジェクト」も推進することで、若年層にアプローチしている。
札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の全国5都市の屋外ビジョンに出稿。新シリーズの登場を盛り上げた。
その時、その場所でしか得られない 「共体験」が関係性をつくる
発売時のプロモーションとして、「メタラバー」では、プロモーションムービー「誕生」篇を中心に置いたコミュニケーションを実施。屋外ビジョンのほかにTwitterやYouTubeなどのSNSでもプロモーションムービーを発信した。
「OOHメディアを活用した理由のひとつは、新シリーズの発売にあたり、オンラインとオフラインを横断したユーザー接点を持つことで、盛り上がりをつくりたかったからです。また、もうひとつの理由がOOHの持つ『偶発的な出合い』が、現代では貴重な価値だと考えたから。様々な情報に容易にアクセスできてしまう今だからこそ、予想外の出合いをつくることが、ブランドにとっては重要だと考えました」と関田氏。
また、出稿エリアは若年層が集うエリアを選択しているが、特に渋谷は『fifth』の店舗や『Younger Song』のメンバーの活動エリアがある点も決め手となったという。
「『テレビCMで多くの人に訴求したから売れる』という時代ではない中、周囲の人をどれだけ巻き込めるかが重要です。今回の場合だと、『fifth』や『Younger Song』の方にも自分ゴト化していただき、ファンの方にも発信していただくことで話題が広がっていくと考えました。OOHの持つ『その時、その場所でしか見られない』という特性は不便にも思えますが、ハードルのある中で『同じものを見た』という共体験は、プロジェクトチームやファンとの関係性を強固なものにするのではないかと思います」と関田氏は現代ならではのOOHメディアの魅力を話した。
広告に触れる体験にも新奇性を メタバース広告で世界観を表現
リアルの場でのOOH掲出に加え、メタバース上でも“屋外広告”を展開した今回のプロモーション。関田氏は、シリーズの持つ世界観を体験してほしいと検討した結果、「バーチャル渋谷」への出稿を決めたと話す。
「『メタラバー』は従来のスタイリングの常識や、『時間をかけてつくりこまなければならない』『面倒くさい』などといった思い込みを“超越”したいという思いから、“メタ”という言葉を名前に入れており、表現上のコンセプトとしても『近未来』や『超越感』を掲げています。この世界観を言葉だけではなく、実際の体験としても味わっていただくためにはと考えた結果、ブランドのコミュニケーション活動そのものがコンテンツとなり、新しさを感じていただけるメタバースに出稿することにしました」。
「バーチャル渋谷」上の広告を体験したEveさんのファンが、SNS上でEveさんにそのことを伝えたところ、Eveさんが反応して多くのファンの間でメタバース広告が話題になるといった効果も見られたという。
同じOOHであっても、リアルとメタバース上では特性や効果が異なると関田氏。まだまだ発展途上ではあるが、この先リアルの場のOOHともデジタル広告とも異なる価値を発揮する可能性がありそうだと考えを話す。
「メタラバー」では今後も、新奇性のあるコミュニケーションにより、10代、20代のターゲット層との接点を継続的に構築していくという。
「バーチャル渋谷」内では、プロモーションムービーの出稿に加え、道中やビル前の空間などに、浮遊する商品説明ボードを設置することで、現実を“超越”した仮想空間ならではの体験を提供した。
※本記事は月刊『宣伝会議』2023年5月号に掲載されたものです。