知る・学ぶ/コラム大谷翔平起用の渋谷ジャックで企業認知アップ 人々にインパクトを与える繰り返しのリアル体験
駅広告
2024.04.18
ディップは2024年1月には大谷翔平選手を起用した屋外広告の渋谷ジャックが話題となったほか、大阪・梅田に「dipビジョン」を設置するなど、OOH広告の活用に力を入れている。OOH広告が持つ「リアル体験」という特徴について、ディップ ブランド戦略部部長の大門一将氏と山口瑠菜氏に話を聞いた。
場所は渋谷にこだわり、企業認知がアップ
「バイトル」や「はたらこネット」など求人情報サイトを運営するディップは、2024年1月から2月にかけて、東京、大阪、福岡、名古屋、広島など、日本各地で大谷翔平選手
を起用した交通広告を提出した。特に、1月16日 ~ 31日には渋谷ジャックとして、渋谷スクランブルスクエアビジョンやハチ公前広場、渋谷駅東口地下広場など、渋谷駅周辺の5か所に大型交通広告を展開。SNSなどでも話題を集めた。
ディップは2023年12月に大谷選手がディップの社名である「dream,idea, passion」を体現する人物として、ブランドアンバサダーに就任したことを発表。企業認知・サービス
利用意欲の向上を目的として、大谷選手が出演するCMや、大谷選手とディップの創業者である冨田英揮氏との対談動画を紹介した。渋谷ジャックなどの交通広告も、その一
環として掲出したものだ。「今回は、渋谷に集中してディップの存在感を出すことにこだわりました」と語るのは、ブランド戦略部部長の大門一將氏。ターゲット層の若者が集まる渋谷を、大谷選手が大きく写った広告で埋め尽くし、渋谷スクランブルスクエアビジョンの放映は1日の半分を同社で占有するなど、強く印象付けることを狙った。大門氏らが渋谷ジャックの初日に足を運んだところ、多くの人が写真を取る姿が見られたほか、SNSへの投稿もあったという。同社 マーケティング統括部 ブランド戦略部 プロモーション企画課の山口瑠菜氏は「本施策ではOOH広告を巡ってもらいやすいように、場所や時期などをできるだけ詳しく丁寧に広報しました。すると、SNSで『終わる前に見に行かなきゃ』といった投稿や、広告が出ている場所を回って動画撮影をしたものを、YouTubeに投稿してくれた人もいました」と話す。大門氏は同施策の結果について「広告はその特性上、好意的に受け入れられることが少ないものですが、本施策では広告をリーチさせるにと
どまらず、アンケート調査によると、接触・非接触との比較で企業認知が4ポイント上がりました」と語った。テレビやWebメディアなど複数のメディアにも取り上げられ、PRの効果が定量的にとれたのも狙い通りだという。
OOH広告、成功のカギは「繰り返し」と「リアルな体験」
大門氏は、OOH広告は「繰り返し」と「リアルな体験」であることに大きな利点があると語る。通勤や通学などで繰り返し同じ広告に接触してもらえることや、テレビやスマホ越しではなく、ひとつの場所で、不特定多数の人が同時に共有できるのはOOH広告ならでは。さらに写真を撮ったりOOH広告を見ることを目的に外出をしたりと、能動的に楽しんでもらえるのは、広告としては稀有な存在だ。しかしその反面、OOH広告は意識的に「見る」ものではなく、「移動中に視界に入ってくる」ものという特性もある。「OOH広告は基本的には音声がなく、意識的に見られることの少ないものです。だからこそ、風景になじみすぎず、“違和感”を与えるものでなければいけないとも考えています」(大門氏)。同施策では、大谷選手の印象的な目を生かしたビジュアルに、社名や「夢を叶える仕事に出会おう。」など、シンプルなメッセージで通り過ぎる一瞬で伝え切ることにこだわった。CMやデジタル広告との連動においては、表現方法が変わっても、メッ
セージがブレないことを大切にしているという。
ネーミングライツを獲得した梅田の「dipビジョン」
「OOH広告は今後も廃れることのない、定期的に出す価値のあるメディアだと思います。コロナ禍で全体的に活力を失っていた広告の中でも、屋外のビジョンなどは出稿が戻るのが早かった印象ですし、デジタルとの連携など、クリエイティブの幅も広がっています」と大門氏。同社では、OOH広告はテレビやデジタルに引けを取らず、安価に多くのリーチがとれる可能性のあるメディアと位置付け、力を入れている。そこでネックになるのが、OOH広告の枠数だ。「デジタルと比較すると、確保する枠数やスケジュールのコントロールが難しい点はデメリットです。メディアプランニングに余裕をもたせるなどの工夫はしていますが、どうしても難しい部分ではありますね」(大門氏)。
そこで2023年には、大阪・梅田にある関西最大級の3D媒体を買い付け、「dipビジョン」とした。枠の大半を占有すること、同じ場所に出し続けることで繰り返し接触させることを重要だと考えたのだ。また、待ち合わせ場所や目印として活用されることも狙っている。
「街のシンボルとなれば、生活者の役に立てることはもちろん、広告効果としての価値も上がります。今後、他のエリアにも広げていきたいと考えています」と大門氏。さらに、自社の営業支援に繋げることも意識しているという。「『バイトル』などは競合も多いサービスです。たくさんの比較対象があるなかでクライアントに選んでもらうには、“インパクトのある広告を出している”というイメージや“リーチが取れる”と自信をもって言えることが重要です。東京だけでなく、大阪や福岡など日本全国で展開することで、各地のクライアントに安心して選んでもらえていることを実感しています」(大門氏)。
※本記事は月刊『宣伝会議』2024年5月号に掲載されたものです。