事例コラム 防波堤で漫画を“読破”|『キングダム』×佐賀県の観光誘客OOH施策

屋外広告

2026.03.26

 佐賀県は、漫画『キングダム』(原泰久氏・集英社刊)の連載20周年を記念し、地域資源と作品を融合させた大型観光誘客プロジェクト「キングダム×(駆ける)佐賀県〜佐賀の火を絶やすでないぞォ。〜」を展開——。県内では、原作の世界観を体感できる大規模な展示や体験コンテンツが相次いで登場しており、話題を集めている。

 有明海を望む東与賀町・干潟よか公園の防波堤には、コミックス1巻から77巻まで全ページを掲出する「キングダム読破堤(以下読破堤)」が出現。全長300mを超えるもので、作品を一気に“歩き読み”できる屋外展示として注目されている。作中の過激な場面は佐賀名産の佐賀海苔で隠すなど、地域ならではの演出も施している。観覧は無料。

 また期間限定で、佐賀空港は「佐賀キングダム空港」として装いを一新。空港内外の施設や壁面がキングダムのキャラクターや名シーンで彩られ、到着客を迎える。3階スペースパークでは、「受け継がれる火」をテーマにした「佐賀キングダム空港特別展」を無料で開催しており、原作の名場面を中心に34点の複製原画や有田焼コラボ作品を展示している。
 このプロジェクトは、佐賀県出身の原氏の連載20周年という節目を機に実施。佐賀県の誇る地域資源と作品の世界観を掛け合わせることで話題化を図り、県内への観光誘客のきっかけをつくることを狙った。県は作品の圧倒的な発信力を生かし、空港利用者の増加や市内各地への周遊促進につなげたい考えだ。

 このほかOOH関連では、キングダムのキャラクターたちがデザインされたラッピングバスが佐賀市内を走行。京急線 羽田空港第1・第2ターミナル駅ホームには、「佐賀キングダム空港」の巨大看板を掲出する施作も実施している。
 掲出後、X(サガプライズ! 公式アカウント)でのプロジェクトムービーの投稿が約250万リーチを記録している。

今回のプロジェクト、広告展開について佐賀県政策部広報広聴課サガプライズ! の池田匡孝氏に話を聞いた。

——ターゲット層
「キングダムは20〜50代の男性を主なファン層としているが、アニメや実写映画をきっかけに支持を広げ、年齢層を問わず高い人気を集めていることから、同プロジェクトでは幅広い世代をターゲットにしている。読破堤は、原作漫画を長年読み続けているコア層がメインターゲット。佐賀キングダム空港は、原作ファンだけでなく、映画やアニメをきっかけに同作品のファンになったライト層も分かりやすく楽しめることを意識した」

——掲出場所の選定理由
「干潟よか公園の防波堤は、漫画77巻分を掲出できる長さを有しており、また、佐賀キングダム空港からのアクセスのしやすさなど県内で最も実施条件に適していると考えて決定した」

——過激なシーンは、佐賀県名産の「佐賀海苔」で隠すというアイデアのきっかけ
「漫画で過激なシーンを隠す黒塗りは『海苔』と呼ばれている。また、読破堤越しに広がるのは、海苔養殖が盛んな有明海。佐賀県が誇る名産品『佐賀海苔』を多くの人に知ってもらうのに適した場所だと考え、佐賀海苔で隠すという企画に至った。なお、佐賀海苔は印刷したものになる」

——苦労した点
「最も苦労したのは、ファンの心理に寄り添いながら、自然な形で佐賀県と接点を作る企画設計。キングダムという強いIP(知的財産)と組む以上、話題性のある表現や一過性の盛り上がりを生むこと自体は難しくない。しかし作品を全面に押し出しすぎるのではなく、ファンが作品体験の延長線上で、県の施設や風景に自然に触れる構造をどう作るかを考えた。佐賀空港では視覚的に分かりやすい装飾を施すだけでなく、空港そのものを企画の主体として位置づけた。愛称も『佐賀キングダム空港』とすることで、単なる装飾空間ではなく、キングダムの世界観に触れる最初の入口として認識してもらう設計とした」
「また空港で体験が完結してしまわないよう、県内を巡るきっかけとして読破堤や『古湯温泉周遊キャンペーン』を企画。県内を周遊する導線を作成した。キングダムと佐賀県のバランスをどう保つか最後まで悩み続けた」

——空港内の事業者にもプロジェクトを“自分ごと”として捉えてもらうためにしたことは
「各店舗・事業者と丁寧にコミュニケーションを重ねながら、空港全体で来訪者を迎える体制づくりに取り組んだ。期間中は空港で働くスタッフがコラボオリジナルのピンバッジを着用して業務にあたり、全体が“チーム佐賀キングダム空港”として来訪者を迎える」

 

※本記事は『総合報道』2026年2月25日号に掲載されたものです

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