事例コラム 68本の電柱広告で街に彩りを──調布市で話題のえの木の取り組みが広告賞を受賞
2025.06.09
㈲えの木(本社東京、井上一格社長)は22年春から現在まで、東京都調布市小島町一帯に「えの木駐車場」の電柱広告を68本掲出している。

電柱広告のデザインは、調布市の市木や市鳥をあしらったイラストや、交通安全を啓蒙する内容、「薔薇(ばら)」「仙人掌(さぼてん)」「鰐梨(あぼかど)」など植物の難読漢字クイズ─と、装飾を目的としたものが多い。
きっかけは、オフィスに面する道路の電柱がコロナ禍により広告を取り下げていることに気付き、街のにぎわいが失われているという実感からであった。街の人々が日常的に目にする媒体という強みに、ここで何か面白いことができるのではないかと可能性を感じとった。
同社は広告づくりの右も左もわからない状態であったが、手探りでまずは自社名の由来をつづったデザインを6本出した。駐車場の広告だが、料金や時間はあえて書いていない。


特に反響があったのは、キャラクター探しのコンテンツ。調布市立タコ公園の周りの電柱にタコのキャラクターを散りばめ、市役所前にはキャラ探しの趣旨を示す壁面看板を掲示。この遊びは地域の子どもたちが反応を示し、取材中の街歩きでも子どもがタコのキャラクターを指差している場面に遭遇した。
井上社長は「子どもが話題にすると、家族の中で会話が生まれることになる。子どもが笑うと両親は無視できない」と、街のにぎわいの先に地域住民の生活の豊かさまで狙った意図を述べる。

この電柱広告群は「調布駅前ににぎわいを。」とのタイトルで「第14回 東京都屋外広告コンクール」に出品され、(公社)東京屋外広告協会 会長賞を受賞した。
これを受け、調布市の市長からは「コンクールを通して調布市が注目されることになり、大変喜ばしい」と感謝のコメントも贈られた。またコンクール入賞という実績で、企業信頼度も顕著に上がったという。
「点数の多さとコンセプトから、きっと何かの賞を狙えると思っていた。今までの取り組みがコンクールで評価され、報われた思いだった。デザインを考えるのは大変な作業だが、地域からは楽しみにしているという声もあり、励みになる」。(井上社長)
同社は現在も広告本数を増やし、夏にかけて新作を製作中だ。
※本記事は『総合報道』2025年5月25日号に掲載されたものです