事例コラム JRAが仕掛ける若者向け交通広告|“誘われて週末トーキョーケイバジョー”とは?

駅広告

2025.09.15

日本中央競馬会は4月21日〜6月15日にかけ、京王線・京王井の頭線、JR各線に「誘われて 週末 トーキョー ケイバジョー」のキャッチコピーで交通広告を連続掲出した。

 今回のシリーズ広告は、春の東京競馬場への来場誘致を目的とし、「東京競馬場は気軽に人を誘って楽しめるレジャー」をコンセプトに企画された。
 デザインは、レトロポップなタッチのイラストで若年層に人気のイラストレーター・ヨシフクホノカさんを起用。若者のカップルや友人同士が週末の東京競馬場で待っている楽しい出来事を予感させるストーリー仕立てになっている。

 メインのコピーは「誘われて 週末 トーキョー ケイバジョー」で共通するが、約2週間ごとにクリエイティブを更新し、「胸が高鳴るのは、週末キミといられるから。」「ちょっと冒険したいから、ついて来て。」─などサブコピーにも変化を加え、東京の多様な若者を切り取る、青春オムニバスストーリーを展開(キャプション参照)。東京競馬場開催期に合わせ4つのビジュアルへ変化することで、駅利用者の注目度を集めることを狙った。
 ターゲット層は「競馬未経験層」。初めて競馬場を訪れるきっかけとして「人に誘われたから」がアンケートにおける回答として上位であった点に着目し、様々な「東京競馬場に誘い/誘われる」というテーマが立てられたという。

 「本広告では、競馬になじみがない未経験層を中心に、テーマをよりリアルに共感・自分ごと化してもらうため、若者にも親和性の高いイラストの世界観で表現した。また、表現の届け方を変えることで、これまでの広告でリーチできなかったターゲット層の意識変容を促す狙いもあった。登場人物のセリフは誘う側/誘われた側のリアルな心情と、週末の東京競馬場にワクワク・ドキドキする心の動きを重ね、現地で体験する競馬の魅力を共感しやすく伝えることを心がけて制作した」。(担当者)

 東京競馬場の広告出稿は今までも京王線で展開されていたが、「今年は広告がおしゃれになっている」など、変化に好意的な反応がSNSなどで観測されている。

 同会は日頃よりマス広告・Web広告など、より広いリーチの獲得を目指したメニューも実施しているが、継続的に交通広告を起用する理由として「“日常の中で不意に出会う体験”が、情報過多の現代社会において、ターゲットの心を動かすきっかけのひとつになると考えている」と語る。また、リアルなものに終わらず、SNSなどでの共有が期待できることも物理的な広告ならではとの考えだ。
 一方で、広告づくりは来場者からは総じて高い評価を得ているものの、来場する機会のない人々にどのように伝えるか、あるいは伝わっているのか不明な点を課題と認識し、同会は今後のクリエイティブへのさらなる工夫に意欲を示している。

 

※本記事は『総合報道』2025年7月5日号に掲載されたものです

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