知る・学ぶ/コラムデータで読み解く、コロナ禍前後の生活者行動とOOHメディアの可能性

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2024.06.20

交通広告・OOHに強みを持つメトロアドエージェンシーと、マーケティング・広告の専門メディア「AdverTimes.(アドタイ)」とのコラボレーションで、OOH領域の知見をより広く、深くお伝えしていく短期連載。 第3回は、インテージ生活者研究センター長の田中宏昌氏がOOHメディアを巡るコロナ前と後の生活者意識の変遷について解説します。

外出機会も回復し、旅行やイベントと行動意欲も高まる

20235月に新型コロナの感染症法の分類が5類に移行されて1年が経とうとしています。インテージが感染拡大初期(20203月)から継続実施している自主調査(※1)では、感染不安とともに外食や国内旅行など、さまざまな外出行動に関する意識も聴取してきました。

最新の調査結果では感染不安はもちろん、外出行動に関する不安も過去最少のスコアとなっており、生活者の外出行動の意欲は確実に回復へ向かっています(図表1)。また、リモートワークを交えた新しいワークスタイルも定着しつつあると考えられます。

 

図表1:感染不安や外出に関する不安の推移

コロナ一過。外出による感染不安も過去最弱のレベルに落ち着きをみせる。

平日昼間の人出は回復基調も夜間は戻らず

東京の都市部や地方都市における人出も、スマートフォンの位置情報(※2)を用いて確認してみると確実に回復に向かっていることがわかります。

はじめにオフィスワーカーの人出が映し出される平日昼間のデータを見てみると、池袋や新橋といった東京都市部においては、8割~8.5割程度まで回復していることがわかります。また、仙台や広島といった地方都市ではほぼコロナ前の状態まで回復しており、仙台においてはコロナ前を上回っています。

 

図表2:平日昼間(14時台)の人出(位置情報による人流データ分析)

新しい街の風景の出現。コロナ前よりも1~2割少ない出社スタイルが定着へ。

一方で平日夜間に目を向けると、昼間ほど戻ってきていないことが浮き彫りになります。コロナ禍に定着した「イエナカ時間重視」といった意識変化からか、以前ほどは「仕事帰りに買い物やご飯を楽しんで」という行動が減少していることがその背景にあると考えられます。また、物価高により外での飲食を控えたり短時間で切り上げたり、といった節約意識の高まりも要因と考えられます。

 

図表3:平日夜間(20時台)の人出(位置情報による人流データ分析)

イエナカ時間機会増に伴い、夜の街も8割程度の戻り。遅くまで遊ぶ機会も減少へ

体験型メディアという特性がOOHの魅力

今年2月に電通から発表された「日本の広告費(※3)」をひも解くと、屋外広告が含まれるプロモーションメディア広告費は前年比103%と伸長しており、内訳では「イベント・展示・映像(同129%)」、「交通広告(同108%)」、「屋外広告(同102%)」とそれぞれ回復が確認できます。人々の外出機会が順調に回復に向かっていることから、企業におけるOOHの活用は今後も活発になっていくものと思われます。

外出機会の増加と併せて、OOHへの期待が高まる要因に生活者の「体験重視」への潮流があります。モノよりもストーリーを伴う体験を大切にする今日の風潮において、OOHは「ストーリー化」されやすく記憶や検索や購買をはじめとしたその後の行動へと続く力を持っていると感じています。JR線や地下鉄の乗り換えで多くの人が行きかう渋谷の地下道の一コマ。壁一面に設置された迫力ある大型ディスプレイに等身大のアイドルグループが歌い踊る。少し離れたところでは女子高生たちがスマホを構え、自分だけの“推し”を追いかけている。会心のショットはTikTokInstagramなどで発信されて、瞬く間に友人やその先のコミュニティに共有される……。

会社への行き帰りなどにそうした光景を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。共有される写真には、推しの姿だけでなく、ディスプレイがたたずむ地下構内を行きかう人の波や友人や推し活仲間との「共体験」でアガった気分も写し撮られ、豊かな物語性を帯びているはずです。

気になったモノ・コト(シーン)をスマホで撮影して、InstagramなどのSNSですかさず友人などに共有する、というα世代・Z世代といった若者層を中心としたアクションともOOHは相性がよく、直接の接触者だけなく、間接的な接触者の創出といった「拡散」が期待できることや、「わたしもあそこに行ってみよう」といった「追体験」へと誘う力を秘めているのもOOHならでは、と言えるでしょう。

「Digital×OOH」というさらなる可能性

新宿や表参道などで展開されている3D広告や駅構内や電車内で見かけるデジタルサイネージなど、新しい技術を駆使したOOH広告も登場して、個人のSNSやニュースなどで話題として取り上げられる機会も増えてきました。また、位置情報などを用いて出稿計画を立案したり、広告効果測定を行ったりとデータ活用も日々進化しています。

広告主にとってはインターネット広告などに比べてプランニングの精度や広告効果が見えにくいことを理由に二の足を踏んでいたところもあったかもしれませんが、外出機会も回復しつつある今、アフターコロナにおける生活者の行動意識や外出行動をデータにより正しく捉えるとともに、アップデートされたOOHの活用を検討するよいタイミングと言えるのではないかと考えます。

 

 

  • 1)インテージ生活者Index調査:20203月~
    • 調査地域:全国  対象者条件:15-79 歳の男女  標本サイズ:n=3,000s1回あたり)
    • 調査実施時期: 2020 3月~現在も継続中。
    • 最新:20244月調査 /回収:3,107s / 調査実施時期:2024.3.294.1
  • 2)モバイル空間統計Ⓡ・国内人口分布統計(リアルタイム版)数値は2019.812月の平均人口を1とした時の指数 
  • 3)電通「2023年 日本の広告費」より

このコラムの著者

生活者研究センター長 インテージ 田中宏昌

たなか・ひろまさ/1992年、電通リサーチ入社。1994年より電通の消費者研究センターや電通総研に駐在勤務し、社会潮流や生活者研究に従事。2013年、楽天を経て、2014年、インテージへ。広告効果計測サービス(i-SSP)の開発などを経て、2020年より現職。

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