事例コラム なぜ電子書籍ストアが駅広告を選んだのか?BookLive「花メテ」に見る交通広告の活用事例
駅広告
2026.07.21
電子書籍といえば、スマートフォンやPCの中で出会い、読み、購入するもの。 プロモーションも、デジタル広告や電子書店内のキャンペーンを中心に行われるイメージが強いかもしれません。 そんな電子書籍ストアのひとつ「ブックライブ」を運営する株式会社BookLiveが、2025年11月、池袋駅でオリジナルコミックの大型広告を掲出しました。同社のマンガ作品では、駅ばりポスター広告は初の試みです。では、なぜ駅のメディアが選ばれたのでしょうか? 本記事では、株式会社BookLive コンテンツ本部 販促・業務部 販促チームの深澤純氏に話をお伺いし、人気電子コミック「花秘める君のメテオール」の駅広告事例を紹介します。 デジタル広告だけでは届きにくい新しい読者との出会い、SNS上での広がりなど、交通広告ならではの活用のヒントを探っていきます。
目次
池袋駅に登場した、初のBookLiveオリジナルコミック広告
掲出されたのは、BookLiveが運営するオリジナルコミックブランド「ライブコミックス」の人気作品「花秘める君のメテオール(以下、花メテ)」の駅広告です。掲出期間は2025年11月17日(月)から23日(日)までの1週間。場所は池袋駅東口改札外で、サンシャインシティ方面に通じる通路にある大型広告枠「池袋プレミアムセット」でした。
この広告枠は2面で展開できるため、今回はそれぞれの面に異なる役割を持たせています。
1面は新規読者向けに作中の印象的なカットとセリフをちりばめたデザイン。もう1面は既存ファン向けに、メインキャラクター「ラビ」の誕生日である11月19日を祝うデザインで構成されました。後者には、作者の珠森ベティ氏が広告のために描き下ろしたカラーイラストが使用されました。
初めて作品に触れる人には
「気になる」と思ってもらうきっかけを。
すでに作品を好きなファンには、
「見に行きたい」と思える特別感を。
そんな2つの役割を持たせた駅広告だったといえそうです。

作中カットとセリフをちりばめた新規読者層向けデザインのポスター。

メインキャラクター「ラビ」の誕生日である11月19日を祝う内容で構成された既存のコアなファン向けにデザインされたポスター。
電子書籍ならではの読者との距離感
BookLiveは、マンガ、書籍、ライトノベル、雑誌など、国内最大級の品揃えを誇る総合電子書籍ストアの運営のほか、「ライブコミックス」をはじめとした複数のブランドで、オリジナルコミックの制作・配信もおこなっています。「花メテ」は「ライブコミックス」ブランド内の女性向けレーベル「COMICエトワール」から配信されている作品で、ひたむきな少女・ステラと、すべてを諦めた吸血鬼・ラビが織りなす、切なくも美しい愛と呪いの物語として、多くの読者に親しまれています。

「花秘める君のメテオール(通称、花メテ)」の電子コミックの表紙。吸血鬼・ラビ(左)と少女・ステラ(右)がメインキャラクターとして登場する。
紙のマンガとは異なり、電子コミックでは、1話ごとに配信・販売されるものも多く、「花メテ」もこれにあたります。このケースは、読者の反応が早く得られる特徴があります。
そのため、紙のマンガと比べて読者の反応をより近くに感じながら連載していく感覚があると深澤氏はいいます。
「花メテ」は幅広い年齢層の読者に届いている作品です。公式Xや実店舗イベントでの反応からも、作品やキャラクターを深く楽しんでいるファンの存在が感じられたそうです。
読むだけで終わらず、キャラクターを応援したい。作品の世界観をもっと楽しみたい。
そうしたファンの熱量が、今回の駅広告でも見えてくることになります。

「花メテ」作中のワンシーン。2人が織りなす世界観が幅広い層のファンを惹きつける。
デジタル広告だけでは届きにくい層に、どう出会うか
電子コミックのプロモーションは、デジタル広告が主軸のひとつになります。
ただ、デジタル広告は、すでにマンガが好きな人には届きやすい反面、まだ作品を知らない人や普段広告をクリックしない人との接点はつくりにくい面もあります。
「花メテ」も、配信開始から2年ほどが経ち、無料や値引きキャンペーン、デジタル広告も高い効果を上げてきました。連載は30話を超え、読者数や売上も積み上がってきた一方で、ここからさらに読者の裾野を広げていくには、これまでとは違う出会い方が必要ではないか。
その選択肢のひとつとして浮かび上がったのが、駅広告でした。
なぜ駅広告だったのか
深澤氏が駅広告を考えた背景には、ご自身の体験もあったそうです。好きな作品の広告を駅で見かけたとき、強く印象に残った記憶があったといいます。
駅広告は、検索した人や広告をクリックした人だけでなく、駅を利用している人の視界に自然と入る。そこには、まだ作品を知らない人との偶然の出会いが生まれる可能性があります。
既存のファンにとっても、駅広告は少し特別な存在になり得ます。自分の好きな作品が、多くの人が行き交う駅に大きく掲出されている。その光景は、作品の広がりや盛り上がりを感じるきっかけになるかもしれません。
池袋駅が選ばれた理由
掲出場所として選ばれたのは、池袋駅でした。
「花メテ」は女性読者の支持が高い作品です。一方、池袋はアニメやマンガ関連の店舗・イベントが多く、女性ファンを中心としたサブカルチャーの街としても存在感があります。
作品の読者層と、街が持つ文脈。その重なりを考えたとき、池袋は有力な候補地になったそうです。
さらに、当社から提供した通行人数と、性別・年齢のデモグラフィックデータを照らし合わせたところ、池袋駅東口改札外、サンシャインシティ方面通路の通行者層が、作品の訴求したい年齢層・属性と合致していることが確認できました。
駅広告は、単に「人が多い場所に出すもの」ではありません。誰に届けたいのか、その人たちがどの駅・導線を利用するのか。今回の事例では、作品のファン層、街の特性、通行者データを踏まえて掲出場所が選ばれていきました。

池袋駅東口のサンシャインシティ方面に向かう通路。作品のファン層が多く利用する主要導線が今回の広告掲出場所に選ばれた。
初めての駅広告を実施するために準備したこと
BookLiveにとって、オリジナルコミックの駅ばりポスター広告は初めての取り組みでした。そのため、社内で実施の承認を得るうえでは、「なぜ駅広告を行うのか」を説明する材料が必要でした。
用意したのは、前年(2024年)に運用した「#ラビ様生誕祭2024」のXインプレッション数と、池袋プレミアムセットの通行量データでした。SNSでの反応と通行量の両面から、施策の広がりを説明しました。ポイントは、駅広告をXのハッシュタグ企画と一緒に楽しめるように設計したことです。
駅で広告を見つけ、写真を撮り、SNSに投稿する。その投稿がファンの間に広がり、まだ作品を知らない人の目にもふれる。そんな流れが意識されていました。交通広告は、デジタル広告のようにクリック数や購入数をすぐに追えるものではありません。ただ、SNSでの反応や公式アカウントの数値とあわせて見ることで、広告をきっかけにどんな広がりが生まれたのかを振り返りやすくなります。
初めて駅広告を検討する企業にとっても、参考にしやすい考え方です。
数字以上に見えてきた、ファンの熱量
結果は、想定を超えるものになりました。掲出期間1週間における「#ラビ様生誕祭2025」のXインプレッション数が、前年同時期の「#ラビ様生誕祭2024」と比較して130%となり、社内提案時の目標を上回ったそうです。
ただ、深澤氏が想定以上だったと話すのは、数字以上にファンの反応だったといいます。特にラビの誕生日である11月19日には、グッズと一緒に広告の前で撮影した写真を、ファンが次々にSNSに投稿してくれました。
「絶対に誕生日当日に見に行きたかった」
「今年はこういう形でラビの誕生日をお祝いできて嬉しい」
── そんな声が並び、夜遅い時間にも続いていたといいます。
広告を見るだけでなく、そこへ行き、写真を撮り、SNSで共有する。今回の駅広告は、ファンにとって「見に行く理由のある広告」になっていたのかもしれません。
社内外にも広がった、駅広告の反応
今回の駅広告は、読者やファンだけでなく、作品に関わる人たちにも良い反応を生んでいたようです。
作者の珠森ベティ氏にも、広告掲出を喜んでいただくことができ、この広告のために新規でカラーイラストを描き下ろすなど、今回の取り組みに積極的にご協力くださったそうです。
また、社内の多くのメンバーも実際に池袋駅へ足を運び、現地の写真を共有していました。自分たちが関わる作品が駅に大きく掲出されている光景は、社内にとっても印象的な出来事だったのではないでしょうか。
駅広告は、生活者に向けたプロモーションでありながら、作者や編集部、取引先など、作品に関わる人たちにも盛り上がりを共有できる場になり得ます。そうした広がりも、交通広告ならではの面白さのひとつかもしれません。

「ラビ様」として多くのファンを惹きつける吸血鬼・ラビ。
駅広告は、作品の世界観を届ける“企画展示”にもなる
今回の事例を振り返ると、単に「広告を出した」というよりも、「駅で作品の企画展示を行った」と捉えるほうが近いのかもしれません。
原画展や展覧会にファンが足を運び、写真を撮り、SNSで共有する。今回の池袋駅広告でも、それに近い動きが見られました。
駅という公共空間に作品が立ち上がることで、ファンには「多くの目に触れる場所に自分の好きな作品が出ている」という充足感が生まれます。その思いがSNSへ広がり、作品を知らない層にも届いていく。こうした流れは、リアルな場所ならではの広がり方といえるかもしれません。
デジタル発のコンテンツにも、リアルな接点をつくる意味がある
今回の取り組みは、デジタルで読まれる電子書籍であっても、リアルな場所に出ることで、ファンとの新しい接点が生まれることを感じさせる事例でした。
駅で好きな作品に出会い、写真を撮り、SNSで共有する。その体験がファンの記憶に残り、投稿を通じて別の人へも広がっていく。
交通広告には、リアルな場所だからこそ生まれる、そんな広がり方があるのかもしれません。
<花メテをもっと知りたい方はこちら>
本記事で紹介した作品や最新情報は、以下からご覧いただけます。





